2007.6.21 第209号

FAX北九医ニュース 北九州市医師会広報委員会



◆◆◆ レセプトオンライン請求の義務化について ◆◆◆

レセプトオンライン請求の義務化につきましては、厚労省が日医との合意を得ぬまま、昨年3月に省令改正案の発表に踏み切り、そのまま義務化を強行したことから、今後段階的経過措置があるものの、平成23年4月からは全医療機関がオンライン請求を行わなければならないこととなりました。(レセコンの有る医療機関は22年4月から、また年間請求件数が1,200件以下の医療機関のみ、23年から更に2年以内の範囲で厚労大臣の定める日までの経過措置があるが、最大でも25年4月からは実施)
このような中、昨年4月に唐澤新執行部が発足した日医や武見・西島両議員の尽力により、同年6月に医療改革関連法案に異例とも言える21項目にも及ぶ附帯決議を付けさせる際、その中のひとつとして、レセプトのオンライン化についても「目標年次までの完全実施を確実なものとするよう努める・・」という努力目標的な表現に改めさせることに成功しました。
しかしながら、政府・官僚側も今回発表した「骨太の方針2007」にオンライン請求義務化の目標年までの達成を改めて盛り込んだことから、日医も今月7日(木)に「あるべき医療の確保に向けた緊急提言」を発表し、良質な地域医療提供体制を維持するため、オンライン請求できない医療機関にも充分配慮することを求め、附帯決議の具現化を進めるべく対応を行っております。
また、西島議員も5月28日(月)に行われた参議院決算委員会において、このことを質問し、互換性や標準化がなされないまま、医療機関が高い機械だけをいつも買いかえさせられるようなことがないよう、義務化をする前に種々の環境整備を行うことが先だと質し、柳澤厚労大臣からも充分に検討を進めていくとの答弁を引き出しております。
このレセプトオンライン請求の義務化問題につきましては、今後も新たな展開が予想されますので、詳細等々が決まりましたら、改めてご連絡を致します。




◆◆◆ 苦情相談事例について ◆◆◆

本会に寄せられた苦情や相談の中から他院でも参考となるような事例を紹介させていただくコーナーです。
※今回の事案⇒「副作用の出た薬なのに薬代を返してもらえない」(20代・女性)
感冒でA医院を受診し、処方された薬(フロモックス)を服用したところ、両腕に発疹ができたので、A医院に相談を行ったところ、すぐに服用を中止する様に言われて回収され、別の薬(トミロン)を処方されたが、新しい薬代を徴収された一方、1日しか服用しなかった前の薬の残り3日分の代金は返してもらえなかったというもの。(A医院には「お金を返してもらえないのか?」ということは聞いていない)
※解説⇒最近、患者さんから直接、あるいは消費生活センターを通じたこの種の苦情や相談が増えております。
内容は今回の事案の様に、副作用が出て酷い目にあったうえに、その薬を返却した際に代金を返してもらえなかったというものや感冒時等に頓服として出された解熱剤について、熱が出なかったので、全然服用しなかったから、そのまま返却したのに、代金を返してもらえなかったという苦情もありました。
先ず、同じような苦情が寄せられているであろう調剤薬局では、旧厚生省薬務局長通知(昭和36年2月8日付:薬発第44号)による「調剤後の薬剤は薬事法上の医薬品には該当しない」ということを根拠として、返金には応じていないところが多い様です。
すなわち、医薬品とは人のために用いられることを目的として、流通する可能性を有するものを指すのであり、調剤された薬剤は特定の人の特定の疾病のためにのみ用いられ、一般に流通する可能性を有しないものであるからだという解釈です。
また、平成17年には厚労省が高齢者や子どもによる残薬の誤飲防止を目的として、余った処方薬を医療機関や薬局に返還する様、周知した際、持ち込まれた残薬は使用期限や保管・管理の状態が不明であり、再利用出来ないことから、相応分の返金には応じる必要がないことを通知しております。
問者には心情的に同情出来る点もありますが、以上の点から返金には応じられないことを説明し、納得をいただきました。
今後、窓口で同様の問い合わせ等がありました際にご参考ください。
また、以前(本ニュース第180号:平成17年9月6日)に掲載致しました「治らないのに治療費を払わないといけないのか?」も合わせてご参考ください。




◆◆◆ 株式会社は医療や介護に算入すべきではない ◆◆◆

大手介護事業者による介護報酬の不正請求問題が報じられた際、医療関係者の多くは「やはり・・・」という印象を持たれたのではないだろうか。
もともと株式会社は医療や介護事業に参入すべきではなく、医師会は介護保険の導入後に日医総研が調査した「@株式会社は人口密度の高い効率的なところにしか進出しない」「A儲からないと判断したら利用者の事情など関係なく、すぐに撤退する」「B指定取り消しを受けた7割が営利法人である」「C営利法人の不正請求や基準違反は医療法人や社会福祉法人の10倍以上の頻度で起きている」の結果を根拠として、その危険性を早くから指摘していたが、そのとおりの結果となった。
財務省は介護分野のみならず、息のかかった審議会を使って、株式会社の医療への参入を強引に推し進めようとしたが、その理由は「経営の近代化や効率化により競争的な環境が整備され、より安価で良質な医療サービスが提供される」というものであった。今回の事件を受け、どのような言い訳をするのか聞いてみたいところだが、経済政策が完全に失敗し、世界一の借金国と成り下がっても、誰ひとり責任を取るような国ではないので、彼らには知ったことではないのかも知れない。




◆◆◆ 短信 ◆◆◆

内閣府が今年1月〜2月にかけ、全国の成人1万人を対象に実施した「社会意識に関する世論調査」によると、「現在の日本の状況について悪い方向に向かっていると思うものは?」の問いに 「教育(36.1%)」や「治安(35.6%)」等々に次いで「医療・福祉(31.9%)」が5位となった。更に注目すべき点は対前回調査からの伸び率(168%)である。
これは「地域格差」の177%に次いで2位となっており、国民がいかに昨今の医療・福祉制度改革を不安視し、急に悪い方向に向かっているという判断をしているかが分かる結果となった。
尚、ここで「医療・福祉」を挙げた者の割合は男性が60代、女性は50代が高かった。