2006.9.6 第197号 |
FAX北九医ニュース 北九州市医師会広報委員会 |
◆◆◆ 高齢者の受診抑制について ◆◆◆
ここに来て、突然高齢者の受診抑制が起きております。 これは8月に窓口料金が改正となったこともさることながら、公的年金等の控除見直しや老年者控除の廃止により、高齢者の税負担が増えていることが大きな要因として挙げられます。 これまで65歳以上の高齢者には、収入に応じて控除額を設け、上乗せもする公的年金等の控除と所得1、000万円以下に一律48万円とする老年者控除がありましたが、17年1月からは公的年金等控除の上乗せがなくなり、老年者控除も全廃されました。 このため、前年の所得に対してかかる税の影響が今年になって出始め、特に6月より各家計に通知され始めたことから、区役所の窓口には連日苦情電話が殺到しているということです。 一例を挙げると、昨年と収入が全く変わらないのに、住民税が約8倍(4,000円が3万1,100円)にアップ、所得税が0円から42,000円、国保保険料が35,000円アップ、介護保険料が2万円アップと大幅な負担になっており、これが家計を圧迫し、受診抑制にもつながっております。 多摩大の真野教授(医療リスクマネジメントセンター)らが行った調査によると、「医療費を減らすために行うことあるいは行おうと思うこと」の問いに対し、「病院を変える。受診回数を減らす」と回答した高齢者が約37%もおり、特に小泉改革により高齢者にも所得格差が生じていることから、低所得者層で、より顕著な回答傾向にあったということです。 こうした流れを受け、最近本会にも「事前の説明と同意がないまま、勝手に検査をされた」「本当にこんなにたくさんの薬を飲まなければならないのか」「医療費について、窓口に尋ねたら嫌な顔をされた」等の苦情が多く寄せられております。 高齢者は負担金が増え、医療費にも過敏になっておりますので、窓口にて疑義照会のあった際には充分ご説明をいただきます様、各担当者に周知願います。 |
◆◆◆ 苦情相談事例について ◆◆◆
本会に寄せられた苦情の中から他院でも参考となるような事例を紹介させていただくコーナーです。 ※今回の事案⇒「診療を拒否された」(30代・女性) 以前より子どもがA医院(眼科)に受診しているが、なかなか治らないので、A医院には告げずにB病院を受診したり、視力回復センターに通っていたところ、それがA医院の院長に知られ、「他院や視力回復センターに行くなら、うちにはもう来るな」と怒鳴られ、診療を拒否されたというもの。 ※解説⇒以前に同じような事案として、整形外科医から「整骨院に行っているのならば、今後はもう診ない」と言われたという苦情がありました。 本件は日本の医療制度の特徴であるフリーアクセスが残念ながら有効な形で利用されなかった事案です。 患者の一刻も早く治りたいという気持ちはよく分かりますが、医師は初めに治療計画や治療方針を立て、それに添って患者さんの治療に責任を持ってあたっているので、そこに別の医院の治療や他の療法が入ることで、当初の治療計画や方針どおりにいかなくなってしまうことがあります。 それは決して患者さん自身にとっても望ましいことではないばかりか、投薬や処置内容によっては医療安全上も大いに問題があることを告げ、問者には理解をいただきました。 問者からの訴えだけを聞くと、院長からいきなり頭ごなしに怒鳴られ、それ以後は会話が全く出来なかったということなので、もしそれが事実ならば、医療機関側の気持ちも分かりますが、無用なトラブルを避ける意味では、なぜ同時に複数受診することが問題なのかを面倒でも上記の様にひととおりご説明をいただければと思います。 尚、疾患によっては根治が難しかったり、予後が思わしくなく、対症療法を続けていかなければならないケースもあります。 こうした事案について、日本医師会の唐澤会長は「医療現場では近年の度重なる一部負担金の増加などもあり、患者意識の高揚に伴う訴訟リスクが増加している。医療は完全なものではなく疾患によっては根治が難しいものも多く、現実を受け止めることの重要性を、勇気を持って患者に伝え、理解を求めていく努力を行うことも必要だ」とし、行過ぎた患者本位の医療に警鐘を鳴らしています。ご参考ください。 |
◆◆◆ 後発品変更の処方せんは1.8% ◆◆◆
日本薬剤師会は今年4月から実施された処方せん様式の変更に伴う後発医薬品の使用状況等に関する調査結果(速報)をまとめた。 「後発品への変更可」欄に医師の署名・押印があった処方せんの割合は、4月が18.2%で、実際に後発品変更になった処方せんの割合は全体の1.6%、5月は同様に18.6%、1.8%とわずかながら増えている。 速報では、日薬の医療保険委員会、職能対策委員会のメンバーを中心に126薬局の回答を集計し、 今後も後発品の使用状況を定点的に調査し、適宜公表する方針。 126薬局の処方せん取り扱い枚数の平均は、4月が1915.7枚、5月は1992.5枚だった。 4、5月に「変更可」の処方せんを持参した患者が変更を希望した場合にとった薬局側の対応(複数回答)については、「備蓄している後発品に変更して調剤」が70.6%、「備蓄がないため直ちに手配して調剤」が51.6%、「変更せずに処方せんどおり調剤」が29.4%だった。 患者が後発品への変更を希望した理由(複数回答)では、「一部負担金が軽減するから」が77.8%、「テレビなどのCMをみて」が70.6%と群を抜いて多く、「医師に勧められたから」「薬剤師に勧められたから」は、いずれも20%に達しなかった。 日薬では後発品メーカーのテレビCMなどに触発される患者が多いことを踏まえ、「薬剤費だけでなく、医療費全体が安くなるかのような印象を抱く患者が少なくない」(石井甲一専務理事)ことを重視。個別にメーカーとの話し合いを持ち、誤解を招かないような表現に改めるよう要請する方針。 逆に「変更可」の処方せんであっても、患者が変更を希望しないケースもあった。 この理由については、「普段から使い慣れている薬が良い」が80.2%で最多で、次いで「一部負担金があまり変わらないから」が61.1%、「効果が同じであるか不安」が48.4%、「取りあえず様子を見たいから」が17.5%であった。 薬局で後発品に変更した場合、処方せん発行医療機関に情報提供をすることが義務付けられているが、その方法は「ファクス」が最も多く61.1%、「郵送」が18.3%、「電話」が16.7%などであった。 尚、後発品の使用促進策は薬局に備蓄医薬品の増加をもたらし、負担になるとともに、備蓄品の増加に伴うヒヤリ・ハット事例が発生したケースが7.9%あった。 (資料:株式会社じほう メディファクス4994号より) |